今年のノーベル物理学賞受賞といえば2024年10月9日、AI機械学習を可能にした基礎的発見と発明によって実績をあげたジェフリー・ヒントン氏(トロント大学、カナダ)とジョン・J.ホップフィールド氏(プリンストン大学、アメリカ)2名の研究者が受賞しました。
そして2022年は、量子のもつれを使った実験によりベルの不等式の破れを立証し、量子情報科学を開拓したとしてジョン・クラウザー氏、アラン・アスペ氏、アントン・ザイリンガー氏が受賞。
物理学の最前線で議論されているテーマの一つに「ホログラム理論」があります。
ホログラムという言葉は、日常生活では立体映像や光の干渉を使った技術として知られていますが、このホログラム理論は、私たちが住む宇宙そのものに関する壮大な考え方を示しています。
ホログラム理論は、1990年代に理論物理学者レオナルド・サスカインド氏やジェラルド・トホーフト氏によって提案されたアイデアで、その核となるのは「宇宙の中のすべての情報が2次元の境界面に記録されている」という仮説です。この理論は、ブラックホールの情報パラドックスを解決する可能性があるということで注目を集めました。
ブラックホールは、物質を飲み込み、あらゆる情報が消えてしまうように見えます。しかし、物理学では情報は消えないという大原則があります。この矛盾を解消するために、ブラックホールの表面(事象の地平面)にその中のすべての情報が2次元的に記録されていると考えられました。
さらにこの理論は、私たちが普段認識している3次元の空間が、実は2次元の情報の投影である可能性を示唆しています。つまり、宇宙そのものが「ホログラムのようなもの」であり、私たちが感じている立体感は本質的には「錯覚」に過ぎないのかもしれないというのです。この考え方は、現代の量子重力理論や宇宙論とも密接に結びついています。
では、現実は本当にホログラムなのでしょうか?
この問いの答えはまだ出ていないとされていますが、ホログラム理論は、宇宙の仕組みを理解する一つの強力なモデルであり、物理学の限界に挑む有力な理論です。
もしこれが実証されれば、私たちが見て、触れて、感じているこの現実が「実在しない」ということになり、私たちが信じてきた世界が一変してしまいます。
物理学の探求の果てに「ホログラム理論」が、私たち人類をどこへ導いていくのか注目したいところです。